書の鑑賞に関する一考察

本稿は書の鑑賞に関する総合的な研究の基礎研究として、鑑賞の概念を整理し、書における「鑑賞」とは何か、その目的と意義について考察した。研究方法は、書の鑑賞に言及する近現代の論説を精査、分析する方法によった。考察の結果、西洋の芸術理論に基づく「鑑賞」は、書の造形性を主として、その美を直観的に味わうことが目的であり、知的要素は純粋な鑑賞を妨げるものとして、明確に区別される傾向にあるということ、また、伝統的な芸術理論に基づく「鑑賞」は、造形性を主体としながらも、それに偏ることなく、文学性をはじめとする様々な書の構成要素も含めたものであり、知的理解や価値判断は鑑賞と不可分のものであることが明らかとなった。鑑賞の方法論の相違により、享受される内容に大きな隔たりが生じることを防ぐためには、書においては伝統的な鑑賞法がふさわしい。また、書に内包される様々な要素を含め、対象の美を正しく享受することが可能となり、教養に合わせた段階的な鑑賞法のためにも、知的理解が必要であり、その方法論を検討するべきであると結論づけた。

大東書道研究

AN1043856X

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2014-03-20

日本語

紀要論文

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