清酒輸出価格の動学的パネルデータ分析 : 外国為替相場のパススルーと輸出価格決定要因

本論文の目的は葛目（2018）を発展させ、パネルデータ分析と時系列分析の手法を用いて、日本から外国への清酒（日本酒）の輸出価格への外国為替相場のパススルー弾力性を推定するとともに、清酒輸出価格に与える要因についても分析することである。2015年の清酒輸出先上位10か国を対象としたパネルデータ分析の結果から、清酒輸出価格への外国為替相場（日本円／輸出相手国通貨）のパススルー弾力性は0.030であり、国別に見た場合、台湾向けの清酒の輸出に対して清酒輸出業者は名目為替相場の変動に最も敏感に反応するものの（－0.534）、中国向けの清酒の輸出に対しては反応の程度が最も低いことが明らかとなった（－0.078）。また長期的均衡と短期的調整を仮定した標準的なパネルVECMにもとづく動学パネルデータ分析の結果からは、2変数分析においても、Campa and Goldberg（2005）型の4変数分析においても、2期前の名目為替相場が統計的に有意な影響を与えていることが示された。さらにグレンジャー因果性検定の結果から名目為替相場から清酒輸出価格への（グレンジャーの意味での）因果性の存在、またインパルス応答関数と予測誤差分散分解から清酒輸出価格の変動に占める名目為替相場の変動の割合は次第に（長期的に）増加していくことが明らかとなった。

経済論集

AN00071516

02874237

112

33

57

2019-09-30

日本語

紀要論文

紀要論文

publisher